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私がまだ音楽を聴いていなかった頃
2026年9月30日
私がまだ音楽を聴いていなかった頃
1970年代から1980年代にかけては、いわゆるアイドル全盛期だった。
そんな時代の私が最初に心を奪われたのは、桜田淳子だった。
秋田美人らしい整った顔立ち。
そして独特の鼻にかかった柔らかい歌声。
彼女に魅了された人は少なくなかったと思う。
もっとも、当時の私はまだ五歳前後の幼児だった。
今思えば随分ませた子どもだったのかもしれない。
しかし正直に告白すると、私が桜田淳子に惹かれていた理由は歌ではなかった。
ルックスである。
少々自虐的な言い方になるが、幼少期の私は青っぱなを垂らし、人の話も十分理解できないような子どもだった。
当然ながら、桜田淳子の代表曲『わたしの青い鳥』の歌詞など理解できていない。
いや、桜田淳子でなくてもよかったのかもしれない。
当時の私にとって重要だったのは、可愛らしい女性がテレビ画面の中にいることだった。
歌そのものには、ほとんど注意を払っていなかったのである。
今振り返ると、歌謡曲だけでなく童謡ですら、私にとっては同じような存在だったように思う。
歌詞もメロディーも分からない。
ただ何となく流れている。
そんな状態だった。
当時の我が家のテレビは、十四型の白黒テレビだった。
すでにカラー放送の時代に入っていたにもかかわらず、我が家ではなお白黒テレビが現役だった。
アンテナ内蔵型で、映像も音も決して良いとは言えない。
今の基準から見れば、とても長時間視聴する気にはなれない代物である。
そんな環境で育った私は、音と音楽の違いすら十分には理解できていなかった。
音は聞こえていた。
しかし音楽は聴いていなかった。
私の中で音楽に対する感性は、まだ眠ったままだったのである。
その眠りが破られるのは、小学校四年生の時だった。
友人宅で、ある演奏を聴くまでは。