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夜間勤務
2026年9月7日
夜間勤務
夜の街を歩けば、昼とは違ふ人々の姿を見る。
コンビニの店員、漫画喫茶の店員、警備員。
昼間ならば当たり前のやうに人の行き交ふ場所も、夜になれば、その数はぐっと減る。
されど、人が減ったからとて、世の中まで眠るわけではない。
むしろ、夜だからこそ働く人も少なくない。
ITの世界もまた、例外ではない。
人の利用が少なくなる深夜の時間を使ひ、機械のメンテナンスをする者がゐる。
昼間に行へば、多くの利用者に影響を与へる作業も、皆が眠ってゐる時間ならば、比較的静かに行ふことができる。
また、機械の故障や問合せに備へ、二十四時間三百六十五日、事務所に人を置くこともある。
昔から夜に働く者はゐた。
されど、ここ三十年ほどの世の中を眺むれば、その数はずいぶん増えたやうに思ふ。
たとへば、コンビニなどもその一つなり。
かつては朝七時から夜十一時まで営業する店が多かった。
それが、いつの間にやら二十四時間営業が珍しくなくなった。
店が二十四時間開いてゐれば、当然ながら、それを支へる仕組みも二十四時間動かねばならぬ。
システムに故障が起これば、朝まで待ってゐてください、とは言ひにくい。
問合せがあれば、明日の朝にお願いします、とも言ひにくい。
便利なる世の中は、その便利さを維持するために、夜にも人を必要とするやうになった。
これもまた、一つの「需要」といふものなのであらう。
ところが近ごろ、その夜の仕事にも変化が起こりつつある。
AIなり。
これまで人が電話を受けて答へてゐたものを、AIチャットが代はって応じる。
決められた手順に従ひ、定型的な問合せに答へる仕事であれば、機械の得意とするところなり。
ITの輪番も、似たるところがある。
夜間の仕事には、決められたルールに従ひ、異常があれば定められた手順で対応するものが多い。
されば、夜間はAIに任せ、複雑な判断を要するものだけを、昼間の人間へ渡す。
さうした仕組みも、これから増えてゆくのかもしれぬ。
思へば、これは不思議なことである。
人は、便利なる世の中を作るために、夜まで働くやうになった。
そして今度は、その夜に働いてゐた人の仕事を、AIに任せようとしてゐる。
技術が人の仕事を奪ふ、といへば、どこか物騒に聞こえる。
されど、別の見方をすれば、人が夜に働かずとも済むやうにする技術、とも言へる。
では、これから先、夜の街やITの現場は、どうなってゆくのであらう。
労働者を守ることを重んずる国々では、夜勤や輪番をどのやうに組み立ててゐるのか。
EUでは、労働時間について、週四十八時間を平均的な上限とし、日々十一時間以上の連続した休息を設けること、夜勤についても平均八時間を超えぬやうにすることなど、夜働く者への特別な保護が定められてゐる。
さうした土地では、二十四時間動き続けるサービスを、どのやうに人の働き方と両立させてゐるのであらう。
日本とはまた違ふ知恵があるのかもしれぬ。
そして、これからAIがさらに賢くなれば、夜に働く人は減ってゆくのであらうか。
それとも、人の仕事が別の形に変はるだけなのであらうか。
世の中は、便利になるたびに、また別の仕事を生み出してきた。
昼しか開いてゐなかった店が夜まで開き、やがて二十四時間となり、その二十四時間を支へるために、また新たな仕事が生まれた。
そして今、その仕事の一部をAIが引き受けようとしてゐる。
かくして人は、便利さを求めて仕組みを作り、仕組みが変はれば、また働き方を変へてゆく。
夜がなくなったわけではない。
夜に働く者の姿が、少しずつ変はってゆくだけなのかもしれぬ。