システムエンジニアと聞けば、プログラムをすらすらと書き、複雑にして難解なる機械を自在に操る者を思ひ浮かぶ人、多かるべし。

もちろん、さうした技を持つことは大切なり。

されど、それはIT技術者に求めらるる力の、ほんの一部に過ぎぬ。

たとへば、プログラムを書く仕事があるとする。

ただ動けばよい、ただ処理が速ければよい、というものにあらず。

その仕組みを使ふ人に、迷惑をかけぬやうにせねばならぬ。

ネットショップにて買ひ物をしてゐたところ、システムの不具合により、買ひたかった品が買へぬ。 あるいは、画面に表示された金額と、実際に請求された金額とが異なる。

これでは、利用する者もたまったものではない。

また、便利に使ってゐたところ、思ひもよらぬところからウイルスに感染し、スマートフォンが使へなくなることもある。

プログラムを書く者には、かかる事が起こらぬやう、あらかじめ危険を考へ、対策を講ずる力も求められる。

「動くものを作る」だけでは、まだ仕事の半ばなり。

機械を扱ふ者もまた同じなり。

どれほど難しき機械を自在に操作できたとしても、その機械が安全に動くための環境を整へてゐなければ、安心して使ふことはできぬ。

補強すべきところを適当に済ませ、機械が倒れてしまふ。

あるいは、設置場所が暑すぎることに気づかぬまま使ひ続け、機械が壊れてしまふ。

これでは、機械を扱ふ技術がいかに優れてゐても、本末転倒といふものなり。

さらに、ITの仕事において、とりわけ大切なるものがある。

個人情報を漏らさぬことなり。

定められた規則や手順に従ひ、情報を適切に管理するための専門的な知識と技術。

そして、「漏らしてはならぬ」と自らを律する倫理観。

この二つ、どちらが欠けても事は成らぬ。

知識があっても、守る心がなければ危うし。

心があっても、正しく扱ふ技術がなければ、やはり危うし。

されば、ITスキルとは、単にプログラムを書けることでも、難しき機械を操れることでもない。

人を尊重し、礼儀をわきまへ、独りよがりになることなく、仲間と力を合わせ、定められたルールを守り、その仕事を通じて社会に役立たうとする姿勢。

これもまた、IT技術者に求めらるる大切な力なり。

思へば、ITといふもの、機械やプログラムを扱ふ仕事と思はれがちなれど、その実、最後に向き合ふ相手は人なり。

人のために作り、人のために守り、人に迷惑をかけぬやうに働く。

かく考へれば、IT技術者に必要なるスキルとは、技術だけにあらず。

技術を、人のために正しく使ふ力こそ、ITスキルといふものなのかもしれぬ。