主は誰ぞ

世の人、会社に勤むると聞けば、その会社のために働くものと思へり。

されど、ITの世においては、必ずしもさうにはあらず。

我が身を置く会社と、日々机を並べて働く会社とが異なること、さして珍しきことにあらず。

さらに、そのあはひには、また別の会社のあることも多し。

初めてこのありやうを知る人は、「それで仕事になるものか」と首をかしぐ。

もっともなる疑ひなり。

されど、世のシステムは、人の都合を待たずして動き続ける。

新たな仕組みをつくるにも、古きものを守るにも、決められた時までに事を成さねばならぬ。

されば、折々に人を集め、散じ、また集めることとなる。

路傍に立つ人を呼び止めて事足れりとはならず、経験あり、技あり、人と交はる術を知る者を求むれば、おのづからこの形となる。

かくして、人は会社に属しながら、その会社の外に働く。

さらに、人を求むる者、人を送り出す者、その間を取り持つ者など、幾人もの手を経て、一つの現場に集ふことも珍しからず。

外より見れば、いと複雑に映るべし。

されど、内にある者にとりては、これ日々の営みなり。

奇妙なるは、この仕組みにあらず。

いつしか、それを当たり前と思ふに至る人の心なり。