資格なくして、技術者たり得るか

世に専門の技をもって業とする者、多し。

その多くは、しかるべき資格を得て、初めてその仕事に就くことを許される。

たとへば、建物を管理する者には、ボイラーや電気主任技術者などの資格を求められることあり。医師には医師国家試験、法律を扱ふ者には弁護士資格あり。

資格なくして、その業を行ふことの難しきこと、言ふまでもなし。

さて、ITの世にも資格は数多くある。

ネットワークの技を証するものにネットワークスペシャリスト、Linuxに通じたることを示すものにLPICあり。

また、CiscoのCCNA、VMwareのVCA、VCP、VCAP、VCIX、VCDXなど、扱ふ技術によって様々な資格が設けられてゐる。

これらを持つ者は、客より一定の信頼を得やすく、給金にも良き影響あり。転職の折にも、資格の有無が助けとなることは少なくない。

されど、不思議なることに、これらの資格を持たざる者であっても、ITの仕事をすることはできる。

資格なければ医師とはなれず、弁護士ともなれず、一定の設備を扱ふにも資格を求められる世の中にて、IT技術者だけは、資格証を持たずとも現場に立つことを許される。

これは、ITがそれほど簡単なる仕事だから、と思ふ人もあるべし。

されど、実のところは、その反対なり。

ITの仕事、とりわけシステムエンジニアと呼ばるる者の役目は、技術のみを扱ふにあらず。

ネットワークを扱ふ者、サーバを扱ふ者、データベースを扱ふ者、アプリケーションを作る者、また顧客と話す者など、異なる技を持つ者たちと力を合わせ、一つの事を成さねばならぬ。

時には幾人もの人をまとめ、意見の異なる者の間に立ち、納期を守り、障害を避け、皆を一つの目的へ向かはせる。

かく考ふれば、システムエンジニアとは、技術者というより、技術を持つ人々を束ねる者に近きところもある。

不思議なるかな。

機械に詳しき者ほど、機械だけを見てゐては仕事にならず、人と人との間に立つことを求められる。

ITとは、機械を扱ふ業と思はれながら、実のところ、人を扱ふ業でもあるらし。