どの業種にもいえることだと思うが、コロナ禍の前後で、IT関係の職場環境も大きく変わったのではないかと感じている。

私が特に違いを感じるのは、人員配置や、協力会社の技術者に求められる仕事の進め方である。以前とは、どこか様子が違うのである。

その背景には、テレワークという、かつての日本では積極的に取り入れられてこなかった働き方が急速に広まったことがあるのではないだろうか。

もしかすると、私の見方が偏っているのかもしれない。それは重々承知のうえで、今回は、客先常駐のインフラ基盤エンジニアとして経験してきた現場の変化について書いてみたい。

新型コロナウイルスの感染拡大が本格化したのは、2020年初めのことである。あれから六年余りが過ぎ、当時の変化を振り返るにも、よい時期ではないかと思う。

最初に断っておきたいのは、ここ十年ほど、私の働き方の大半が客先常駐型だったということだ。

SI企業、銀行、通信キャリア、自治体の電算室など、さまざまな職場で仕事をしてきた。

一方、自社の情報システム部門に所属し、首都圏や地方都市の拠点を回ってシステムの構築作業などを行ってきた方々は、また違った印象を持っているかもしれない。

あくまでも、シニア層の一人のITエンジニアが見てきた現場の話として、お読みいただければと思う。

テレワークが明らかにしたもの

コロナ禍で起きた大きな変化の一つは、企業や自治体でテレワークが急速に普及したことだろう。

国土交通省の2025年度調査によれば、雇用されて働く人のうち、直近一年間にテレワークを実施した人は16.8%だった。過去にテレワークを経験したことがある人は25.2%である。

テレワークが一時期ほど盛んではなくなったとしても、働く場所の選択肢が、コロナ禍以前の状態に完全に戻ったわけではない。

そして、実際にテレワークを導入してみると、それまで出勤して顔を合わせて仕事をしていたときには見えにくかった問題も、表に出てきた。

その一つが、メッセージアプリを使ったコミュニケーションではないだろうか。

対面で仕事をしていれば、ちょっとした疑問を相手に尋ねることもできる。説明が多少不十分でも、相手の表情や反応を見ながら、言葉を補うことができた。

また、相手が忙しそうか、話しかけてもよさそうか、といったことも、何となく察することができる。

ところが、テレワークでは、そうはいかない。

疑問点を伝えるにも、何が分からないのか、その背景には何があるのかを、相手に伝わるように言葉でまとめる必要がある。

普段からSNSやスマートフォンを使い慣れている若い人であっても、仕事上の疑問や課題を簡潔に整理し、相手に正確に伝えられるかどうかには、個人差があるように感じた。

日常のメッセージをやり取りする能力と、仕事上の問題を整理して伝える能力は、必ずしも同じではないのである。

「補助する人」から「自分で仕事を進める人」へ

もう一つ、私が変化を感じているのは、協力会社の技術者の配置である。

コロナ禍以前、客先に出勤してチームで仕事を進めていたころは、現場に欠かせない高い技術力を持つ人の下に、経験の浅い人をアシスタントとして配置するケースが、私の周囲では少なからずあった。

経験豊富な技術者が中心となり、その人の指示や助言を受けながら、若手が仕事を覚えていく。そうした体制が成り立っていたのである。

ところが、コロナ禍以降、私の周囲では、そうした配置を以前ほど見かけなくなったように感じている。

代わって目につくのが、経験年数はまだ浅くても、自分で考えて行動し、必要な情報を集め、周囲と調整しながら仕事を進められる人である。

いわゆる「セルフスターター」と呼ばれるタイプだろう。

もちろん、若ければ誰でもそうだというわけではない。また、経験豊富な技術者の助言や支援が不要になったということでもない。

ただ、対面で隣に座っていれば、先輩が様子を見て声をかけたり、困っていることに気づいて手を貸したりできる。離れた場所で働くことが増えると、そうした支援を以前と同じように行うのは難しくなる。

そのため、仕事を進めるうえで、本人が自ら考え、必要なときに周囲へ相談し、仕事の状況を適切に報告できることが、以前にも増して求められるようになったのではないだろうか。

シニア技術者にとっては追い風なのか

「それは、たまたまあなたの職場で起きていることにすぎないのではないか」

そう言われれば、確かにそのとおりである。私の経験だけで、IT業界全体の傾向だと断定することはできない。

ただ、私は、プロジェクトの突然の中止や長期延期を何度も経験してきた。そのため、契約更新の時期が近づくと、現在の仕事を続けながら、次の仕事先についても情報を集めるようにしている。

とりわけ、私のようなシニア層は、いつ何時、プロジェクトの終了や契約の変更に直面するか分からない。

先週も、以前取引のあった会社の幹部の方から、現在の仕事の状況について尋ねられた。その際には、先方の会社の様子についても話を聞くことができた。

あまり自慢できる話ではないかもしれないが、2019年から2026年現在まで、私の就業先は五回変わっている。

そうした経験もあり、中高年のIT技術者を取り巻く仕事の状況については、ある程度、肌で感じているつもりである。

さて、話が少し横道にそれた。

私が感じている変化を改めて述べると、コロナ禍以前の客先常駐では、チームとして仕事を進めることが、今よりも許容されていたように思う。

それに対して現在は、若い人であっても、自分の担当範囲について主体的に仕事を進められることを、以前より強く求められているように感じる。

この傾向は、私のようなシニア層にとって、むしろ追い風になる可能性がある。

自分で手を動かして作業を進められる。必要に応じて、進捗管理や関係者との調整、若手の支援などもできる。

そうした技術力と経験を併せ持つ人材を求める仕事が、私の周囲では以前より目につくようになった。

もちろん、これは私の限られた見聞から感じていることであり、業界全体で需要が増えていると断言するつもりはない。

ただ、働く場所が変われば、仕事の進め方も変わる。そして、仕事の進め方が変われば、求められる人材の姿も変わっていくのだろう。

皆さんのインフラ基盤エンジニアの現場では、いかがだろうか。

若手の配置や、協力会社の技術者に求められる能力、シニア技術者の役割など、コロナ禍の前後で変わったと感じることがあれば、ぜひ教えていただきたい。