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機内食狂想曲――連続5食の満腹地獄と、35分フライトの早食い競争
2026年10月15日
機内食狂想曲――連続5食の満腹地獄と、35分フライトの早食い競争
今では到底考えられないことだが、かつて旅の途中でとんでもないお買い得情報を手にしたことがある。 それは中華航空(チャイナエアライン)で行く、東京〜アムステルダム往復の格安航空券、お値段わずか8万2千円であった。
安さにはもちろん理由がある。ストップオーバー不可、つまり目的地へ向かう途中の乗り継ぎ地で24時間以上滞在し、入国して観光することが一切許されないチケットだったのだ。日本を出国したら最後、オランダに着くまで入国手続きはできないという制約つきである。
加えて、このチケットは乗り継ぎ回数が異様に多かった。 東京〜台北〜バンコク〜ドバイ〜アムステルダムと、各地で飛行機を乗り換え、24時間以上かけて移動する。しかも機体は中華航空のものに限らず、他社との共同運航便(コードシェア便)であったりした。
ドバイ空港では乗り継ぎ時間が短いにもかかわらず、広い館内をひたすら歩かされ、息を切らしてアムステルダム行きの搭乗口へ走り込む羽目になった。
移動だけでも疲弊したが、それ以上に凄まじかったのが、これでもかと運ばれてくる機内食の提供頻度である。
東京〜台北間で出発直後の軽食と着陸前の夕食。台北〜バンコク間でも深夜食と着陸直前の軽食。さらにドバイ便ではガッツリとした食事に加えて特大のホットパイのおやつまで付いてくる。ドバイ〜アムステルダム間でも、これでもかと言わんばかりのボリューム満点な理不尽なほどの食事が運ばれてきた。
とうとう胃袋の限界を迎え、「もう食べられません」とギブアップを宣言すると、通路を挟んだ向かい側に座っていた大柄な西欧人男性が、「なら私にくれ!」と言うので喜んで差し上げた。
……? 待てよ。この男性、確か日本を出発した時からずっと同じ便に乗っている人ではなかろうか。 それにしても、本当によく食べる。のべつ幕無しに機内で食べ続けている気がするのだ。決まった時間配られる機内食だけでは空腹が満たせないのか、客室乗務員を頻繁に呼んでは、菓子パンやら日清のカップヌードルを持ってこさせてはお代わりまでしている。恐るべき食欲である。
「世の中にはこういう人もいるんだな」と感心したのだが、実は彼がこれほどまでに食欲旺盛だった理由を、のちのオランダ・ベルギーの旅で思い知ることになる。(その話はまた後ほど)。
――さて、時と場所は変わり、私はインドネシアの東に位置するフローレス島のエンデにいた。
バリ島からフェリーと長距離バスを乗り継いでここまでやってきたのだが、さすがに疲労困憊してしまい、隣のチモール島までは奮発して飛行機で移動しようと考えた。当時、インドネシアはアメリカからの特別援助があったおかげで、国内線が異常に安かったのだ。ジャカルタ〜バリ島までの2時間のフライトが1万円、この時の区間に至っては3,000円程度だった気がする。
だが「安かろう悪かろう」ではないが、この航空会社の運用は実に凄まじかった。何が酷いといって、接客態度や安全面ではなく、フライトスケジュールを航空会社の都合で直前に勝手に変更してしまうのだ。
その日も、余裕を持って出発の1時間半前に空港へ到着したところ、空港に着くやいなや「今から出発します!」と叫ばれた。 職員の女性が私の搭乗券と手荷物をひったくるように持ち、ハイヒールでカンカンとアスファルトを鳴らしながら滑走路の飛行機に向かってダッシュする。私は彼女に背中をドシドシ押されながらタラップを駆け上がり、機内へ押し込まれた。着席してシートベルトを締めた瞬間に、飛行機は滑走路を走り出し、あっという間に空へ飛び立ったのだった。
クパンまでのフライト時間はわずか35分。「これでようやく落ち着ける……」と胸をなでおろしたのも束の間、なんと客室乗務員が機内食を配り始めるではないか。
前方の席だった私の元へ運ばれてきたのは、配り終わりの頃だった。 トレーを受け取って一口目を運ぼうとしたまさにその時、機内アナウンスが響き渡った。
『当機はまもなく着陸態勢に入ります。シートベルトをお締めください……』
「おいおい! そんな早く食えるわけないだろう!」
心の中でツッコミを入れながら、ジュースで流し込み、着陸態勢に入る直前になんとか完食したのだった。
機内食ひとつとっても、旅の現場にはこうした予想外のエピソードがまだまだ尽きない。まったく、機内食とはなんとも奥が深い(?)ものである。